この前ライブをした日は、前日に友だちがウチに泊りにきて朝までしゃべっていたもんだから、昼すぎに起きたら二日酔いと寝不足であった。
これはまことによろしくない。「よし、そうだ、今日はリハーサルをした後に、ライブハウスの近所を探して風呂屋に行こう。体調を整えなくてはこりゃ今日はもたん」と、ふやけた頭で考えもって、いざ、ギターケースのポケットに手ぬぐいを入れて、「半オエ~ッ」状態で家を出た。
リハーサルが終わる頃にはだいぶんと調子も戻ってきたけど、やっぱりこのままでは本番を乗り切れそうにもない。風呂屋も幸い表通りに出ると道の向かい側にあることを来る時に確認したんで(めっちゃ近いやん)、さっそく手ぬぐいを持って銭湯に向かった。細い路地を入っていくところに案内板が出ていて、「タオル貸します(二本)。せっけん貸します。シャンプー・リンス貸します。手ぶらで来てください。」と書いてある。なんかサービスええなあ。路地を抜けるとお風呂屋さん。番台でお金を払ったら、「タオル持ってはりますか」と聞いてきた。ほんまサービスええなあ。せっけんだけ借りた。
浴場に向かうと、「手ぶらで来てください」な流れ客相手というよりは、こじんまりとした地元密着スタイルとみた。銭湯なんてのはどこでもそうだといってしまえばそうなんだけど、周囲の下町かげんといい、番台のおばちゃんといい、特にそんな感じ。浴場の片すみにある四人も入ったら満員御礼になる小さいサウナにはテレビもあって、ちょうど「笑点」をやっていた。今日も歌丸と楽太郎はいがみあってるな、などと結局番組が終わるまで出られずかなりしんどい思いをしたわけであるけれども、のんびりゆっくりできたおかげで体調は見事に復活。さらには、帰りにラーメン屋にも寄って「並、こってり」をハフハフすすって完全復活。
ラーメン屋を出て、日も暮れた中、手ぬぐいを頭に巻いてぶらぶらしていると、ライブをしに来たというよりはすっかり地元の人の夕方の散歩状態であった。
この日のライブは他のメンバーやお客さんがどう思ったかは知らぬが、自分としては、ソロをブリブリ弾いている最中に一瞬クラ様(ぼくのアイドル、エリック・クラプトンね)やロリー・ギャラガーが舞い降りてきたりもしたんで、とても気持ちよく楽しめたのでありました。ロック最高! これもお風呂屋さんのおかげです。ありがとうお風呂屋さん、今度もまた行くね。
さて、お風呂屋さんの話をしたのでついでといってはなんですが、もう一つお風呂の話。このお風呂屋さんはウチの近所の風呂屋と違って張り紙とか注意書きが少なかった。ウチの近所の銭湯はあちこちに張り紙やら注意書きがしてある。だいたい風呂につかっているときというのはボーッとしているんで、字が書いてあってもボーっとしか見えてないんだけど、ちょっと調子が悪い文章だとかえって頭の中で妙に引っかかってしまって、「なんかもう少し書きかたを換えられんものか」と添削先生の気分で見てしまうものである。なんて話を前にやっていたブログで書いたことがありました、そういえば。
で、今回は風呂屋での話ではなくて、実家のお風呂のことなんだけど、湯沸しのリモコンのパネルのとこにシールが張ってあって、そこの注意書きがなんか調子が悪いのである。いわく、
「ご注意」
リモコン表面の拭き掃除の
時は湿った布を使用してく
ださい。乾いた布は液晶表
示が乱れます。その時は放
置すると正常にもどり、器
具の動作には異常ありませ
ん。
ね、なんか引っかかるでしょ? 言いたいことはよくわかるし、書くべきことも過不足なく書いてあるんだけど、なんかなんか調子が悪い。湯船につかるとちょうど目が行くとこに張ってあるもんだから、風呂に入るたんびに気になってしょうがない。もし、今これを読んでも調子の悪さにピンと来ない読者のかたがおられるなら、みなさんこれから毎日風呂に入る前にこのページを開いて上の文章を読んでみてください。もしくはプリントアウトしてお風呂の壁に張って毎日ながめてみてください。特に後半部分、急にせっかちになっていく展開に落ち着きのなさを感じてくるはずです。
で、お湯につかりながら考えることは、字数を増やさず他にいい書き換えはできないものかと、頭の中でリモコンの拭き掃除に際しての行動のシュミレーションなぞをしつつ、添削先生になってしまうのである。
とりあえずこの注意書きはリモコンの拭き掃除についての注意だから、湿った布を使ってほしいことをまずもって伝えなくてはならぬ。しかし現代においては常に「それはなぜか」という問いが出されるものであるから、乾いた布だと液晶の表示が乱れてしまうからなのだと明記せねばなるまい。そして心配性な消費者に対しては乱れた表示も放置をすれば正常な表示に戻ることをいっておかねばなるまいし、さらには「表示の乱れは誤動作を誘発するのではあるまいか」という懸念も早急に払拭せねばなるまいから、そんなことはないという旨も表記せねばなるまい、ああ、限定されたスペースなのにあれもこれも書かねばなるまい、という担当部署の人の苦悩が思い浮かぶようではあるまいか。
この注意書きは、「表示が乱れても放置すればもどる」ことと「表示が乱れても器具の動作には異常ない」こととを表現しようとするのに、同じ「表示の乱れ」についていおうとしているからだろう、「その時は」で受けてしまってまずいことになってしまった。それぞれの述語は「もどる」と「異常ない」であって、それぞれは「いずれもどる」と「今も異常ない」ということなので、同じ「その時」に起こることではない。想定される消費者の行動とそれにともなう疑問を単純に時系列で並べ、しかも中途半端に指示代名詞を使ったもんだから、全体がわちゃーになってしまったのだなあ、などと、まあこのようなことを湯船につかりながら考えてしまうのである。
今日の記事ではじめてこの注意書きをみた読者のみなさまに、今この文章の解析話が関心もって読まれると思っちゃないけど、お風呂という文字の少ない場所での文章というのは、ここまでつつかれるほどにくりかえしくりかえしくりかえし読まれるのである。
かくいうぼくも、書きたいことを一気に詰め込みすぎてしまって、修飾語、修飾節だらけの読みにくいことこの上なしな文章をよく書いているわけで、こういう文章というのはむしろ親しみがわくというのか、同情することしきりになるのである。注意書きという無味乾燥なものに妙な人間臭さがにじみでてきて、なんか最後はやっつけで「エイヤッ」になってしまった担当の人の気分が伝わってくるようで、むしろ味わい深さまである気がしてくるわけだけど、でもね、そんなガス器具会社の担当者の心の機微などをお風呂では考えたくないのである、毎度毎度。お風呂では体とともに頭も休めたいのに、それでも頭を使えというなら笑点を見ているぐらいがちょうどいいんである。
解決策としては、このシールをひっぺがすことでほぼ完了となってしまうけれども、そういう身もフタもない、今日の記事がまるで意味のなくなるようなことを言っちゃダメ。だからぼくはちゃんと考えました。
「ご注意」
リモコン表面の拭き掃除の
時は湿った布を使用してく
ださい。乾いた布は液晶表
示が乱れます。その時は放
置すると正常にもどり、器
具の動作には異常ありませ
ん。
↓↓↓↓↓↓
「ご注意」(改稿案)
リモコン表面を乾いた布で
拭き掃除をすると液晶表示
が乱れるので湿った布でし
てください。表示が乱れて
もしばらくすれば正常にも
どります。器具の動作にも
異常ありません。
こんなんでどうでしょうか。字数はちょびっと増えたけど、行数は増えていないからよしとしよう。なんか「掃除をしろ」といわれているようで、説教臭さが増した気がしないでもないけど、でももうこの際しかたがないのである。で、これを上からマジックで書けばよろしいんではないんでしょうかと思うんですけどどうでしょうか。
って、そんなことしたらもっと目につく注意書きになってさらにイライラ度が高まりそうだね。だいたいウチの風呂なんだし、もうわかっとるっちゅうねん。お母ちゃんに言ってやっぱりシールはがすか・・・。